訴訟リスク評価
日本企業の多くが直面する潜在的な法的リスクの最たるものは、北米で高額な訴訟を提起された り、捜査の対象となってしまうことです。米国で事業を展開し、あるいは米国へ輸出を行う企業 はすべてそのようなリスクにさらされ、産業やサービスごとに異なるレベルのリスクや潜在的な 法的責任に直面しています。米国での訴訟がそこまで高額で手間のかかるものとなる理由の一つ に、訴訟当事者がほとんどの場合に受け身な態度であることが挙げられます。リスクを予見でき なければ、訴訟の主導権を握る機会をいとも簡単に逃してしまうのです。積極的なアプローチを 取ることによって、ディスカバリーの範囲を狭めることが可能となり、その結果訴訟費用を大幅 に軽減することができます。
米国で提起される訴訟はその95%以上が和解に終わります。リスク評価を行うことにより、多く の場合は訴訟が実際に始まる前に、長期的な展望を持って訴訟の可能性を想定できるというメリ ットが得られます。優勢に立てる可能性を全ての段階について理解することにより、和解協議の 展望がより明確になり、その結果多くの場合問題をより早く解決し、問題そのものを未然に回避 することができます。
優れたリスク評価は比較的簡潔であり、数週間程度の準備期間で、以下の要素について徹底的な 分析を行います。
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係争中の事実の要約及び当事者双方が利用可能な証拠となりそうなものについての要約
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予備的申し立て、期間、タイムライン、裁判外紛争解決手続きの役割、上訴の可能性な ど、訴訟手続きの概要
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訴訟の各インターバルにおける事案のタイムライン及び訴訟費用予算
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適用法の概要及びそうした適用法が目前の事実について通常どの様に取り扱うかなど、 訴訟の法的な分析
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入手可能な証拠、準拠法、裁判管轄、ならびに上訴の可能性に基づいた、訴訟における 強みと弱みの概要
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類似の事案の結果に基づく統計的分析など、訴訟結果の確率分析
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訴訟結果に影響を及ぼす可能性のある政治的、経済的その他数量化不可能な考慮すべき 事由による影響について の分析
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上記要素すべてを総合的に分析した結果推奨する行動指針
一般的な法的リスク評価
法の落とし穴や厄介な訴訟を回避する最善の方法は、北米における貴社の絶え間ない法的リスク を分析することです。特定の訴訟のリスクの他にも、慎重に考慮すべき法的リスクの分野とし て、契約リスク、規制リスク、そしてオペレーショナル・リスクという3つの重要なリスクが挙 げられます。
契約リスク
契約の法的リスク評価は、顧客や契約相手との契約における法的(トラブルの)リスクに晒され るレベルを検討することから始まります。これには、補償条項、準拠法の選択、価格変更を引き 起こす事由、リスク移転事由、紛争解決、不可抗力、付保義務、用語解釈、重大な違反、契約自 体の中核条項など、すべてのリスク関連規定を分析することが必要となります。個々の契約の域 を超えて、すべての契約について、内部的な一貫性、リスクの均一な分散、企業が選択するリス ク許容度のレベルに見合ったものであることを徹底することが重要です。
規制リスク
日本企業が米国において事業活動を行う場合、潜在的に何千もの法令の適用対象となります。お 客様の規制リスクの分析を行うにあたり、私どもは、まずお客様の事業活動を規律するあらゆる 連邦、州、および地方自治体の法令を特定した上で、これらの法令に対するお客様の遵守状況を 審査し、必要に応じてリスク管理対策の実施または変更を推奨します。強固な規制リスク評価プ ロセスで、お客様の事業活動に重大な影響を及ぼし得る規制変更の可能性についても慎重な検討 を行います。これには、お客様の事業運営に影響を及ぼし得るあらゆる税法、報告・許可にかか る要件、保険・担保にかかる要件、倒産規則、貿易協定、内部管理要件、ならびに政府機関のガ イドラインの変更の可能性を検討することも含まれます。お客様の事業活動に影響を及ぼし得る 規制変更の可能性が明白である場合には、かかる規制変更の実施の可能性、変更によりお客様の 事業が受ける影響、そして変更実施による影響を軽減または利活用するためにとるべき対策につ いて調査するために、分析を行います。
オペレーショナル・リスク
北米の法制度の適用対象となる事業の運営は、異なる性質のリスクを伴います。オペレーショナ ル・リスクとは、人間の過失もしくは不正行為、内部管理の不行き届き、または外力に起因する 損失にかかるリスクです。人的資源の分野、企業統治、および製品安全性基準の遵守における怠 慢、ならびに製造における事故は全てオペレーショナル・リスクの一例です。この様なリスクを 特定してその法律効果を推定するのは、米国での事業運営について費用対効果分析を行う上で必 要不可欠です。ある事件の法的な位置付けは、企業の製造ライン、産業、企業構造、または事業 運営を行う州などといった特定の要因に著しく左右される場合がありますが、これらの要因はほ んの一例に過ぎません。分かりやすい例を挙げれば、ある製薬企業がペンシルヴァニア州のフィ ラデルフィアで事業を運営する場合、製造責任訴訟に関して言えば、ミネソタ州のミネアポリス で事業を運営する類似の企業よりも高いリスクにさらされますが、同じ企業がミネソタ州のミネ アポリスで事業を運営する場合、雇用差別や賃金関連の紛争が発生するリスクはペンシルヴァニ ア州のフィラデルフィアで事業を運営するより高くなります。お客様の事業が米国でさらされる オペレーショナル・リスクを理解することは極めて重要であり、こうしたリスクを減らすために どの様な対策を取り得るのかを知ることは更に重要です。
インハウス・アドバイザリーグループは、企業と個人のお客様に対して、7年以上にわたってリ スク分析サービスを提供してまいりました。そこで培われた経験と幅広い産業と専門的分野にお ける法律・ビジネス両方の専門家のネットワークが、私どもの強みです。
過去の事例
私どもが提供するリスク分析業務は、他の法務サービスと重複することがよくありま す。2018年後半に、ある日本企業から、北カリフォルニアでのホテル建設の資金調達 に特定の種類のオフショア・ファンディングを用いることのリスクについての見解の 提供と、商業不動産の合弁事業の開発契約書のレビューとを同時に依頼されました。 その資金調達のメカニズムは、米国のある政府施策に左右されるものでしたが、その 政府施策は3週間以内に終了する予定になっており、その事について米議会において 与党内で揉めに揉めていました。更に、議会選挙を控えて野党がその政府施策の変更 に興味を持っていることを公表しており、事態が混迷するのは目に見えていました。 プロジェクトの資金調達は、その政府施策の終了日より前に期限を迎えることになっ ていました。私どもの職務は、議会がその政府施策を延長または変更する可能性を見 極め、選挙後の議会の新与党の下での変更の可能性を推定し、両方のシナリオに沿っ てプロジェクトへの財務・運営面の影響を見極め、これらのリスクへの予防手段とし てお客様に有利な条件を策定し、かつこれらの条件を首尾よく契約に盛り込めるよう にお客様の相手方と交渉することでした。
私どもは、議会証言を慎重に検討し、独自のネットワークを通じてワシントンDCの 弁護士達と協議した結果、かかる政府施策が延長される可能性が極めて高くまた議会 で新たな与党が誕生してもかかる政府施策が有効に存続すると正しく予測することが できました。そして、お客様の相手方との契約についても交渉を有利に進めて重要な 条項に変更を加え、合弁事業におけるお客様のリスクを劇的に減らすことに成功しま した。本件の依頼の内容にはリスク分析報告書も含まれておりましたが、このプロジ ェクトに関して認識しうる各リスクの特定、結果についての確立分析、そしてお客様 の利益を守るために推奨すべき対策を網羅した報告書を10日以内で完成し、提供しま した。